食道部扁平上皮癌の各症例について、まずデスモグレインの抗原分布がどのように変化するのか検索をおこなった。その結果、扁平上皮癌については2つの型に大別されることが確認された。1つは角化傾向が高く癌真珠を形成するもので、浸潤癌胞巣の細胞ではデスモグレイン抗原が細胞膜でなく核周囲に集積する像が見られる。これらの癌細胞では抗原は均一に分布するのではなく、部分的に濃く集積する。もう一つの型は比較的角化傾向の低いもので、デスモグレインはやはり細胞膜でないが、細胞質内で糸状の構造に分布しているものがある。この型の場合、分化が進んだ部位では抗原は細胞膜に局在するものが多くなる。このような抗原分布の違いと癌細胞の分化度に関係があるのかどうか解析を進めている。 さらにこの前者の型について免疫電顕による解析で細胞内構造と関連するか解析をおこなった。その結果、filamentousな構造物とこの抗原は密接な関連をもち、寧ろ核膜など膜構造との関連が少ないことがわかった。膜蛋白なのに膜構造と関係なく、線維様構造物と関係するのが興味深い。現在この線維状構造物が何であるか解析を進めている。 また上皮細胞で膜構造と関連するデスモヨ-キンについてこのデスモグレインと同様な関係があるか解析した。その結果、核周囲にデスモグレインが集積する細胞ではデスモヨ-キンも同様に動くことが示された。これはデスモヨ-キンがデスモグレインの細胞内移動に関連する可能性を示唆している。
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