研究概要 |
平成9年度では、骨代謝および骨形態形成に重要な副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHRP)および線維芽細胞増殖因子(FGF)とそのレセプターに対する微細構造学的、分子細胞生物学的検索と行った。従来、我々は腫瘍から産生されるPTHRPが、正常の軟骨・骨組織においても産生されておりそれらの細胞増殖や分化に大きく影響を与えることをPTHRP遺伝子欠損マウスを用いて細胞生物学的に解析してきた。9年度の計画ではさらに軟骨細胞のもう一つの重要な因子である線維芽細胞増殖因子(FGF)とそのレセプターに関する組織化学的検索を加えることにより、骨・軟骨細胞の分化増殖に更なる解明を与えた。具体的には、胎生期の骨端板軟骨のFGFレセプターtypeI,II,IIIの遺伝子発現および局在を検索したところ、軟骨細胞の分化に伴って異なるレセプターは発現されることが明らかとなった。一方では骨芽細胞系細胞はtypeI,II,IIIの全てのレセプターを有しており、ラット骨髄内にFGFを投与するとアルカリホスファターゼ活性を示す骨芽細胞系細胞の増殖とそれに付随した骨芽細胞への分化や骨形成が認められた。従って、FGFはbone morphogenetic proteinと同様に骨形成細胞への分化を誘導する重要な因子であることが明らかになった。さらに我々はPTH/PTHRPレセプター遺伝子には上流と下流のプロモーターが存在し、骨・軟骨組織では下流のプロモーターが機能すること、さらには骨芽細胞の下流プロモーターは活性型ビタミンDにより制御されるが、軟骨細胞では制御されないことから、骨代謝における活性型ビタミンDとPTHまたはPTHRPの相互作用の解明への生物学的解明の一助を与えた。
|