前年度には、歯の発生過程におけるL3遺伝子の発現と消長について、in situハイブリダイゼーション法により明らかにした。 そこで本年度は、培養歯胚を用いて、L3遺伝子が歯の発生に及ぼす影響を形態学的に明らかにした。胎齢12日のICRマウスの胎仔より、無菌的に下顎第一臼歯歯胚を摘出し培養した。次に、L3遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、培養歯胚でのL3遺伝子発現阻害実験をおこなった。まず、培養歯胚にL3遺伝子に対するアンチセンスの有効濃度について検討した結果、至適濃は度20μMolであることがわかった。歯胚を、1日間培養した翌日よりアンチセンスを添加し始めることが、最も有効であることが判明した。そこで、摘出した歯胚を、47、11および14日間培養した。その結果、アンチセンス添加による影響は、培養開始4〜7日ではほぼ正常に発達するものの、11日目以降には正常な形態は認められなかった。アンチセンスを添加し培養した歯胚は、上皮組織に比べて間葉組織の増殖分化が強く抑制され、正常な歯胚の形成は認められなかった。以上より、L3遺伝子は歯の発生段階に応じて、部位及び時期特異的に発現することが示された。さらに、L3遺伝子に対するアンチセンスを用いたL3遺伝子発現阻害実験により、L3遺伝子は、歯胚間葉組織の増殖と分化に必須な因子であり歯胚の形態形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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