我々はActinobacillus(Haemophilus)actinomycetemcomitans(A.a.)FDC Y4株の染色体中に、IS200様の挿入配列が存在することを見出し、ISAa1と名付けた。今年度はISAa1について以下(1)-(3)のことを検討した。 (1)ISAa1のコピー数の変異:当初血清型の異なる7株においてISAa1のコピー数について調べたところ、血清型とISAa1のコピー数には相関性が見られた。そこで臨床分離株を含めた27株を用いてRFLP法により再検討をおこなった。また、血清型特異抗体を用いて血清型を調べた。結果、RFLPのパターンから27株は7グループに分類された。血清型では5グループに分類された。RFLPのパターンによる分類と血清型による分類との間に相関性はなかった。しかし、ISAa1を用いたRFLPの疫学調査等への応用の可能性は示された。 (2)ISAa1の挿入部位について:Y4株について挿入部位を検討したところ、ISAa1 4コピーのうち2コピーはリボゾーム蛋白質遺伝子クラスター中に挿入していた。その結果、S10オペロン、spcオペロン、alphaオペロン間の並びが近縁であるActinobacillus influenzaeと大きく異なっていた。A.influenzaeとEscherichia coliでは同じ並びをしている。このことがA.a.菌にとってどの様な意味があるかは今のところ不明である。 (3)他の口腔内常在菌におけるISAa1の存在:口腔に常在するStreptococcus属、Porphyromonas属、Actinomyces属の数菌種について、サザン法により、ISAa1の存在を検討したが、今回調べたいずれの菌種においてもISAa1と相同性の高い配列は見出せなかった。
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