1)ラット下顎第三臼歯の舌側部骨嚢に軟骨様骨組織を見い出した。この軟骨様骨組織は周辺部からの骨化が伸展するにつれて、次第に消失した。軟骨様骨組織の中央部の基質はタイプII型コラーゲン抗体に対して陽性を示したが、タイプI型コラーゲン抗体に対しては陰性であった。タイプX型コラーゲン抗体に対する免疫染色では、基質中央の肥大化した細胞に陽性反応が観察されたことから、この部位の細胞は最終分化を遂げた軟骨細胞であることが判明した。一方、軟骨様骨組織の辺縁部では、タイプI型コラーゲンに対して陽性を示した。微細構造的には、軟骨様骨組織辺縁部では多くの分化型軟骨細胞様の細胞が観察されるが、中央部では肥大軟骨細胞様に移行していた。以上の結果から、軟骨様骨組織は分化型の軟骨細胞によって形成されることが明らかとなった。 2)典型的なエナメル芽細胞に分化しないenamel-free areaの内エナメル上皮(EFA上皮)について、ラット下顎第一臼歯を用い、微細構造、アルカリフォスファターゼ(ALPase)反応、TUNEL法によるアポトーシスの検索を行った。その結果、EFA上皮は未分化な内エナメル上皮から分化期エナメル芽細胞様ステージ、成熟期エナメル芽細胞様ステージ、縮合エナメル上皮様ステージを経て萠出を迎えることがわかった。このうち成熟期エナメル芽細胞様ステージで強いALPase陽性を示した。また、縮合エナメル上皮様ステージでは細胞内にアポトーシス小体が多数観察され、かつTUNEL陽性を示したことから、この時期にアポトーシスを起こしていることが明らかとなった。
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