本研究では、骨の付着部に実験的に損傷を与え、生体と親和性のよい、多孔性のPVAスポンジを損傷部に埋め込み、このPVAスポンジ内に侵入した筋側からの細胞の動向、骨側からの細胞の動向を、治癒過程を追いながら、明らかにしていき、さらに対照群として、PVAスポンジを埋め込まないものからは、筋側の骨への付着の再現過程を明らかにすることを計画している。現在14日齢までの標本が完成している。その結果、PVAスポンジ埋入後、3日位経過すると、PVAスポンジ周囲は、線維性の皮膜で覆われ、その後、損傷を受け壊死していた筋細胞は、活発に再生してくる。このことはアザン染色で証明された。アザン染色は、筋を赤に、骨や腱性組織を青に染める。実験直後、変性した筋線維は染色性が薄れ、壊死に向かっていく様子が判別することがされた。そして、7日齢では、再生してきた筋線維が、PVAスポンジ周囲の線維性被膜の中に侵入してくる様子が観察された。このことは、筋線維は、単に壊死から、再生しようとする力だけでなく、付着して機能しようとする別の力が出現してくることが示唆された。さらに経過を追ったところ、14日齢になると、PVAスポンジ周囲に再生した筋線維はしっかりと付着し、ある程度咀嚼機能が回復し、通常の餌をとるようになる事がわかった。来年度からは、この筋線維に出現する付着しようとするタンパクは、何であるのかmRNAレベルでの検出をin situ Hybridyzationを用い、検出を試みる予定にしている。また、治癒過程におけるPVAスポンジの骨側における組織の変化についての検索を試みる予定である。
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