研究概要 |
1)HT-29細胞のTNF-αによるNF-kBの活性化 HT-29細胞を10ng/ml TNF-αで刺激し,1.5時間後のnucelar extractを調製,pIgR5′上流域に存在する2個のNF-kB結合部位をそれぞれprobeとしてgel shift法を行なった。その結果,転写開始地点近傍に存在するNF-kB結合部位にDNA結合蛋白質が検出された。しかしながら5′側のNF-kB検出部位にはDNA検出蛋白質は検出されなかった。さらに,抗p50,p65抗体を用いたsupershift assayの結果,抗p50,p65抗体単独ではpartial shiftがみられた。抗p50,p65両抗体の存在下では完全なshiftがみられた。 以上の結果からTNF-αによるpIgR遺伝子発現には,転写開始地点近傍に存在するNF-kB結合部位にp50およびp65のheterodimerが結合し,転写活性化に関与することが示唆された。 2)TNF-α刺激によるNF-kB結合部位のpromoter活性に及ぼす影響 pIgR遺伝子5′上流域のDNA fragementをNF-kB結合部位を2個,1個もしくは1つも含まないchloramphenicol acetyltransferase(CAT)vectorを作製した。これらのvectorをHT-29細胞にtransfectionした。Transfectionした細胞からcell lysateを調製し,CAT活性を測定することによりpromoter活性を検討した。その結果,TNF-α刺激によるCAT活性の有意な増加は検出できなかった。そこでさらに検出の感度をあげるため,CAT遺伝子をluciferase遺伝子に換え,luciferase活性を測定した。その結果,NF-kB結合部位を1つも含まないvectorと比較し,NF-kB結合部位を含むvectorをtransfectionした細胞ではTNF-α刺激によりluciferase活性が有意に増加した。しかしながらその活性の増加度は約120%と非常に弱かった。 これらの結果より,TNF-α刺激によるpIgR遺伝子発現において,promoter活性を充分に上げるためにはさらに上流の塩基配列もしくは3′-untrnslated regionも必要である可能性が示唆された。
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