研究概要 |
上皮細胞の分化と神経,および上皮成長因子との関係の解析を目的に,ラット胎児を材料として,味蕾の形態形成過程での舌粘膜上皮細胞のEGF(上皮成長因子)とEGFレセプターの局在,ならびに基底細胞,味細胞,神経について,各種抗体をマーカーに用いて,光顕免疫組織化学による検討を行った. 胎齢14日目のラット胎児では,まだ味蕾の形成はみられないが,多層化した上皮層の基底膜直下に,神経特異エノラーゼ(NSE)抗体に陽性反応を示す神経が認められた.胎齢16日目では,味蕾の原基が形成され,原基の基底部でサイトケラチン18抗体に陽性反応を示す細胞が観察された.また,味蕾原基内には,NSE,PGP9.5抗体陽性の神経が認められた.胎齢18日目では,味蕾基底部の細胞がサイトケラチン18,20抗体に対して陽性反応を示し,また,一部の細胞にNSE抗体陽性の細胞が認められた.味蕾内部の神経は,NSE,PGP9.5,S-100蛋白抗体に対して陽性を示した.胎齢20日目と出生直後のものでは,味蕾基底部の細胞が,サイトケラチン18,20抗体に対して陽性で,味蕾を構成する一部の細胞で,NSE,PGP9.5,セロトニン抗体陽性反応が認められた.また,神経は,NSE,PGP9.5,S-100蛋白抗体に対して陽性を示した.一方,いずれの発生段階でも,EGF,EGFレセプター,神経細胞接着分子(NCAM)抗体陽性反応は認められなかったが、これは次回の検討課題としたい. 以上の観察で,サイトケラチン18,20抗体陽性細胞は基底細胞,NSE,PGP9.5,セロトニン抗体陽性細胞は味細胞であると思われるが,この点をより明確にするために,電顕免疫組織化学によって細胞の同定を行い,さらに,味細胞と神経がシナプスを形成する時期についての検討を行う予定である.
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