今年度は、骨芽細胞様MC3T3-El細胞をconfluence後30日まで培養し、培養各時期に細胞を回収してそのtotal RNAを抽出し、チロシンホスファターゼ遺伝子の発現の変化について検討を行った。 ○RT-PCR法によるチロシンホスファターゼ遺伝子の発現の解析 チロシンホスファターゼ活性を示すコンセンサス配列からセンスならびにアンチセンスのプライマー数種類を設計し、培養各時期の骨芽細胞のtotal RNAから逆転写酵素を用いて合成したcDNAをPCRにより増幅した。その結果各時期におけるPCR産物が検出された。しかし、培養時期間の断片のサイズならびに発現量の違いは認められなかった。この理由としては、設計したプライマーを用いたPCR反応では骨芽細胞の分化過程に関与するチロシンホスファターゼ遺伝子を検出出来ない可能性が考えられる。今後、別のチロシンホスファターゼ認識配列を用いてプライマーを設計し、再びPCR反応を行う予定である。 ○Differential displayによるチロシンホスファターゼ遺伝子の発現の解析 一方、チロシンホスファターゼ認識配列を用いたDifferential displayによる実験では培養各時期の細胞から抽出されたmRNAの発現に変化が認められた。非特異的な増幅等の可能性も考えられるが、今後再現性の確認を行った後にこれら変化のある断片の再増幅およびシークエンシングを行い、その塩基配列を決定し、全長cDNAのクローニングを進める予定である。骨芽細胞石灰化過程におけるチロシンホスファターゼ遺伝子の関与について調べられた文献はほとんどないことから、このことを検討することはチロシンホスファターゼ遺伝子を研究する上で大きな意味を持つことになる。
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