代表的な歯周病関連菌であるFusobacterium nucleatum (Fn)、Prevotella intermedia (Pi)、Prevotella nigrescens (Pn)およびPorphyromonas gingivalis (Pg)の病原性と生育環境との関係を検討し、以下のことを明らかにした。 1. Fn、PiおよびPnではpH5.0-7.0で増殖が可能だった。一方、PgはpH6.0-7.0というより中性に近いpHでのみ増殖した。さらにFn、PiおよびPnはアミノ酸やペプチドの代謝に伴い、アルカリを産生し低pH環境を中和した(J Dent Res 1997、Oral Microbiol Immunol 1997)。 2. PiとPnはともにグルコースを含まない培地ではアンモニア、イソブチル酸およびイソバレリアン酸などの細胞為害性代謝産物を大量に産生し、高い菌体外プロテアーゼ活性を示した。しかし、グルコースが存在するとこれらの代謝産物の産生と菌体プロテアーゼ活性はともに有意に減少した。Pgはグルコースの影響を受けなかった(J Dent Res投稿準備中)。 3.特に環境の影響を受けやすいPiの代謝産物産生能と菌体外酵素に注目し、この調節機構を明らかにするために、まず、Piの主要代謝経路と考えられたアスパラギン酸の代謝経路および代謝酵素を検討した。その結果、アスパラギン酸は脱アミノ(アンモニア産生)後、オキザロ酢酸になり(1)一部は還元されコハク酸に(2)残りはオキザロ酢酸への脱炭酸の後、ギ酸と酢酸に代謝されることが明らかになった(Oral Microbiol Immunol投稿準備中)。 次年度は、以上の結果をもとにPiを嫌気条件で連続培養し、Piの病原性の一つである細胞為害性代謝産物産生能および菌体外酵素の調節機構を明らかにする予定である。
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