本研究では、口顎協調運動に関係のある咀嚼野からの投射を受けている線条体部位を同定し、その領域のニューロンの咀嚼中の活動様式を明らかにすることを目的とした。 1.まず、ウサギ大脳皮質咀嚼野から線条体への投射をWGA-HRPを用いて解剖学的に検索するために、WGA-HRPを咀嚼野に注入すると、前交連より尾側の被殻に標識終末が認められた。 2.無麻酔動物の咀嚼中にこの被殻尾側部からニューロン活動を筋電図活動、顎運動と同時に記録し、ニューロンの活動様式を分析した。その結果、約60%のニューロンが咀嚼に関連した活動を示し、咀嚼のstageの変化に伴って活動が変化した。過去の研究から食物摂取から嚥下に至るまでの一連の咀嚼は咀嚼開始から取り込んだ食物を臼歯部に移送するstageI、食物を臼歯部で粉砕するstageIIa、咀嚼終了直前のstageIIbの3つの過程に区分されいる。記録されたニューロンの活動様式には2つのタイプが認められ、一つはstageIにおいて活動を変化させ、もう一つのタイプは全咀嚼過程を通して活動を変化させた。 3.これらの結果から被殻は咀嚼の遂行、特に咀嚼のstageの変化に重要な役割を演じていることが示唆された。
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