歯髄細胞は各種外来刺激に対する知覚あるいは防御機能を有するとともに、一次象牙質、二次象牙質の形成とその維持を行うという他の組織には見られない重要な役割を果たしている。このように、歯髄細胞は象牙質の石灰化にも重要な役割を果たしていると考えられているが、その詳細は明らかでない。プロテオグリカンの構成成分であるグリコサミノグリカン鎖は、歯髄において他の多くの結合組織よりもその総含有量が高いことが報告されおり、このグリコサミノグリカンの多様な機能構造の合成に重要な役割を果たしているのが種々の特異性を持ったグリコサミノグリカンへの硫酸基転移酵素である。すでに、ラット歯髄細胞よりクローン化された培養細胞より、cDNAライブラリを独自に作成している。そこで今年度は、グリコサミノグリカン鎖を硫酸化する新種の特異性を持った酵素を既知の酵素の活性中心と思われる部位のプライマーを作成し、RT-PCR法によりサブクローニングした。得られたクローンをプローブにして、作成したcDNAライブラリよりスクリーニングを行い、既に報知されているheparan sulfate sulfotransferaseのファミリーと思われる新種のクローンを得た。しかし、5'末端側が不十分であったため、5'RACE法により、完全長のmRNA配列を決定した。ノーザンブロット法によりこのmRNA発現パターンを検討したところ、コンドロイチン硫酸の合成およびその硫酸化を促進するTGF-β添加により、数時間以内にその発現量が一過性に上昇することがわかった。今後は、その酵素の細胞内での役割を検討する事により、歯髄細胞の役割、特に象牙質の石灰化に与える役割の解明を目指す。
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