研究概要 |
盛んに骨を吸収している破骨細胞の骨に面した細胞膜は褶曲しており,刷子縁と呼ばれる特殊な構造をとっている.この刷子縁膜と質的に類似した生体膜を大量調整することを目的として,破骨細胞にラテックスビーズを取り込ませてファゴソームを形成させ,その性状解析を行った.ビーズを取り込んだ細胞を経時的に回収・破砕し,ファゴソームを単離し,その中に含まれるリソソーム性プロテアーゼ,カテプシンKおよびカテプシンDの量的変化をウェスタンブロッティングで検出した.カテプシンKは形成後間もないファゴソームに一過性に集積するが,その量は時間の経過と共に減少していった.一方,カテプシンDの集積は時間がたつにつれて著明となり24時間後に最大となった.生体内で骨を吸収している破骨細胞に免疫染色を施すと,カテプシンKは刷子縁および骨吸収窩で陽性であるのに対し,カテプシンDは細胞内にとどまるように顆粒状に存在している.すなわち,我々が破骨細胞で形成させたラテックスビーズ-ファゴソームは,形成間もないうちは破骨細胞の波状縁と類似の膜組成を持っている可能性が考えられた.この形成初期のファゴソームは大量調整可能であり,モノクローナル抗体作製のための抗原として利用できると考えている.また,我々のファゴソーム形成の実験結果は,リソソーム性酵素でありながら,カテプシンKとカテプシンDはそれぞれ異なる経路で破骨細胞内を輸送され,異なる時間経過で作用すべくプログラミングされている可能性を示唆している.
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