研究概要 |
腸管縦走平滑筋においてacetylcholine(ACh)により惹起される収縮はM_3受容体を介するものであり,中枢においてもその受容体の存在は認められている。研究代表者は中枢神経活動の変化の中でも、特に、加齢や病態におけるAChのシグナル伝達の低下減少に興味を持ち、M_3受容体を介する腸管縦走筋の収縮反応をモデルにそのメカニズムを追求すべく研究を行っている。今回、アラキドン酸代謝物のシグナル伝達における役割は、炎症、病態に限らず、生理的条件下でも重要であると考え、アラキドン酸代謝物のACh収縮のCa^<2+> influxに関わる可能性を検討し、以下の知見を得た。 1.5-lipoxygenaseの阻害剤、AA861,NDGA,esculetin,caffeic acidはそれぞれ有意にAChの収縮を減少させた。 2.AChの収縮は、5-lipoxygenaseの代謝物leukotriene D_4(LTD_4)のantagonist,LY171883で抑制された。 3.5-lipoxygenaseの阻害剤、AA861,5μMのACh収縮減少に対して、顕著な収縮を単独で起こさない生理学的濃度のLTD_4の添加は回復効果が認められ、ACh合成阻害剤であるHC3の存在下でも回復効果が認められた。この回復効果は、Ca^<2+> freeやCa^<2+> channel blocker,verapamilの存在下では認められなかった。 4.回復効果について、cyclooxygenaseの代謝物、prostaglandin E_2(PGE_2)やG-protein activator,AlF_4でも検討したが、AlF_4はLTD_4と同様な回復効果を示し、PGE_2はpresynapseからのAChの遊離促進によるものと考えられる回復効果を示した。 以上の結果より、M_3受容体の情報伝達である収縮に5-lipoxygenaseが関与する可能性が示唆され、AChの収縮におけるCa^<2+>流入に5-lipoxygenaseやその代謝物が深く関与する可能性が示唆された。現在、培養ヒトcell lineを用い、細胞障害に関わる5-lipoxygenaseの役割について検討中であり、新規薬品数種を用いた確認実験と併せて、今後、細胞障害における役割ならびに、細胞障害防御機構についてさらに研究を展開させる予定である。
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