研究概要 |
本研究は咀嚼運動の脳機能に及ぼす影響を脳内で発現している神経関連遺伝子の量的変化として捉えることを目的とし、これに合う実験系の確立を行ってきた。アイソトープでラベルしたcRNAプローブを用いてのin situ hybridizationとバイオイメージアナライザーBAS3000(富士フィルム社製)を用いての解析を組み合わせた実験系において、アイソトープの核種の変更、及びc-RNAフローブの長さを全長に変える事により感度を向上を図った。 これまでにモデル実験として、ラットを麻酔下で下顎骨に電極を埋め込んで三叉神経を電気刺激し、それに応答する脳内の領域のマッピングを行ない、三叉神経の中枢入力経路に符合してc-fos遺伝子の発現が起こることを解析してきた。しかしながらこの系では、麻酔及び、手術の影響が大きいことが考えられた。そこでこれらの影響を極力排除するために、オトガイ神経に慢性電極を固定し、術後一週間を置いた後、無麻酔下で電気刺激を加えた。電気刺激を30分間加えた後、0分、30分、60分後に脳を摘出しc-fosプローブを用いてのin-situ hybridizationを行った。その結果、三叉神経脊髄路核においては、刺激直後ではc-fos遺伝子は非常に強く発現しているのに対して、30分、60分後には急速に低下していた。また三叉神経中脳路核においても同様な結果が得られた。このことから慢性電極を埋め込んだラットでは麻酔及び手術の影響を排除する事が可能であり、刺激に対する経時変化を追うことも可能となったと考えられる。そこでこの実験系に於いて、神経関連遺伝子、とりわけ神経栄養因子の発現を検索するために、NGF,BDNF,NT-3等のcDNAをRT-PCR法によりクローニングして得ており、今後これらの遺伝子の発現レベルを比較検討していく予定である。
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