研究概要 |
本研究の目的を「lipopolysaccharide(LPS)の血管運動神経調節障害機構の薬理学的解明と活性酸素ラジカル関与の直接的な証明」に集約した。得られた結果を以下に示す。 I.LPS由来活性酸素ラジカルの電子磁気共鳴(ESR)法による検討 ESR法によりDMPOをスピントラップ剤としてラジカル種を検出した。この結果,口腔内細菌由来LPSからhydroxyl radical(HO)が産生されることを確認した。 II.表面灌流法による血管運動神経調節機構に対する活性酸素ラジカルの作用の検討 I.における結果を基に,電気刺激により放出される内因性norepinephrine(NE)による血管標本の等尺性張力変化と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定された放出NE量に対するHOの効果を検討した(表面灌流法)。摘出イヌ腸間膜静脈のラセン条標本にFenton反応由来のHOを暴露すると,神経末端から放出されるNEに応答した血管収縮反応は顕著に抑制された。一方,NEの放出量に変化は認められなかった。また,Ca^<2+>-free Krebs-Ringer溶液で表面灌流した場合,ESに応答した収縮反応はHOに影響されなかった。しかし,HO暴露間のNE放出量は増大した。その増加はESとは無関係のものであった。この結果は,Ca^<2+>非依存性のシナプス前膜NE放出機構が存在しており,この機構がHO感受性である可能性を示唆する。 [結論]LPSの血管運動性神経調節障害にLPS自身から産生されるHOが関与していることが確認された。また,HOはシナプス後作用として血管平滑筋α-受容体との相互作用によるNE感受性の低下を引き起こす可能性が示唆された。
|