研究概要 |
ラット唾液腺ミクロソームに認められたチオールS-メチルトランスフェラーゼ活性の性状の一部を明らかにした。本活性は、ジチオスレイトール、1,4-ブタンジチオール、2-メルカプトエタノールを良い基質とし、顎下腺、耳下腺、舌下腺でほぼ同程度の比活性(20-30pmol/min/mg protein;基質、ジチオスレイトール)で認められた。ミクロソーム標品の状態で活性は安定に保持され、-85℃の保存下で約2年間ほぼ一定した比活性を示した。Ca^<2+>(5mM)、Mg^<2+>(5mM)、EDTA(10mM)の添加は本活性に影響せず、金属要求性を示さなかった。さらに、Ca^<2+>とATP(各5mM)の共存下でも活性は変化せず、Ca^<2+>/ATP依存性の活性調節機構は認められなかった。界面活性剤の共存下では、Lubrol PX(0.1%)の添加で活性は約8倍に、Triton X-100(0.1%)で約4.7倍に、タウロコール酸(0.1%)で約2倍に上昇した。また、唾液腺ミクロソームや同時に測定した肝ミクロソームの本活性は、既報の脳ミクロソームや赤血球膜の酵素と同様に、精製酵素では低い活性しか示さないジチオスレイトールも良い基質としたことから、チオールシメチルトランスフェラーゼ活性の発現には酵素の存在状態が強く影響することが示唆される.唾液腺のチオールS-メチルトランスフェラーゼ活性は、チオール化合物に対して反応性の高いジチオスレイトールや2-メルカプトエタノールのスルフヒドリル基を容易にメチル化することから、チオール化合物の局所的な解毒代謝系として機能しているものと考えられる。
|