本研究は、齲歯を予防するための多価ペプチドワクチンの開発を目的とし、病原菌Streptococcus mutansの分泌する主要な病原因子であるグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)の活性阻害抗体(中和抗体)を誘導できるペプチドの特定を試みた。 1)GTFの中和抗体を誘導する部分ペプチドの設計。現在までに1次構造が報告されているStreptococcusの13種類のGTFの構造相同性から酵素の活性発現に重要と考えられる部位を検索し42種類のペプチド配列を設計した。ペプチド配列の決定のため、分子設計用ソフト(Insight II)を用いてGTFのsucrasedomainの立体構造モデリングを行った。2)GTFの部分ペプチドの合成とペプチド抗原の調製。42種類のペプチドをマルチペプチドシンセサイザーを用いてF-moc法により合成した。合成ペプチドはHPLC精製後、KLHと結合させゲルろ過カラムで精製して、これをペプチド抗原とした。3)ペプチド抗原の免疫と抗体の調製。ペプチド抗原をアジュバントを用いてマウス及びウサギに免疫しポリクローナル抗体を作成した。特に抗体価が高い抗血清4種(抗342-356、抗409-427、抗1176-1194、抗1451-1475)はペプチドカラムを用いてアフィニティー精製した。4)GTF蛋白質の調製。gdB遺伝子を高発現させたS.milleri、KSB8株の細胞表層に結合したGTFを超音波枠により調整した。抗GTFペプチド抗体の抗体価の測定。抗血清を採血後、ELISA法及びウエスタンブロットによって、抗原ペプチドとGTFとの交差反応性を確認した。抗体価の評価をELISA法で行なった。6)抗GTFペプチド抗体のGTF活性に対する阻害能の測定。抗血清及び精製抗体のGTF活性に対する阻害能を検討したところ、2種類の抗体に阻害能が認められた。
|