悪性腫瘍の浸潤範囲を正確に評価するためには、腫瘍と腫瘍周囲の炎症性変化とを画像上で区別することが必要である。本研究では、炎症性変化のモデルとして、閉塞性顎下腺炎の磁気共鳴画像について検討した。 まず閉塞性顎下腺炎の急性期から慢性期への移行時期を把握するために、13週齢雄SDラットの右側ワルトン管を形成外科用ナイロン糸で結紮し、結紮後1日-5日、7日、1ヶ月の顎下腺の湿重量と病理組織標本を左側(対照側)と比較した。閉塞性炎を誘発した顎下腺の湿重量は、結紮後1-3日では対照側より増加し、3-4日後から減少した。病理組織標本では湿重量の増加時には浮腫及び充血と腺房の萎縮・消失が、減少時には腺房はさらに減少し、導管様構造及び結合組織の増生が主たる変化として認められた。 次いで、磁気共鳴画像装置を用いて、閉塞性炎を誘発したラット顎下腺の撮像を行った。上記の結果から、ワルトン管結紮後1日-4日、1ヶ月の顎下腺を対象とした。用いたMRI装置は日立メディコ社製MRP-7000AD(0.3テスラ)であり、プロトン用直径15cmループ型表面コイルを使用した。撮像シーケンスはスピンエコー(SE)法並びにグラディエントエコー(GRE)法とした。結紮側顎下腺はSET1強調画像では対照側と同程度の信号強度を示し、高速SE並びにGRET2強調画像では対照側よりも高信号を呈した。
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