平成9年度、まず我々は従来から行われているマウスの造骨細胞と骨髄細胞の共培養により分化培養される破骨細胞様細胞において、1)細胞周期に携わる様々な蛋白および2)cPLA_2蛋白の発現について検討を行った。その結果、この細胞はin vivo培養条件においては、(a)あるいくつかの細胞周期調節因子を発現していること、また(b)cPLA_2発現は造骨細胞系および単球系細胞には認められるものの、破骨細胞様細胞においては認められなかったことが見出された。 次に造骨系ならびに骨吸収系細胞に対する放射線の影響を調べるために用いる系の確立を行った。放射線の骨代謝への影響を調べるための系を確立するにあたり、以下のことを考慮に入れた。 1)造骨系の細胞の反応は、吸収系とのバランスの上に成り立っていること。 2)従来から用いられている骨吸収系細胞は収率が低く、細胞内での様々な遺伝子、蛋白の変動を促えづらいこと。 従って、我々は特に2)の点を改善すべく、ヒト白血病細胞株HL60を使って吸収系細胞である破骨細胞を比較的大量に産正できるin vitroでの系を確立した。この系はa)HL60をTPAで単球系細胞に分比させた後、b)1.25(OH)_2D_3で細胞の維持を行い、しかる後にc)ある特殊な方法で細胞の融合を促進させ成熟した破骨細胞を新生させるものである。 今年度の研究により以下の結果が得られた。 ヒト白血病細胞株HL60を用いることにより、多核の破骨細胞様巨細胞をin vitroで分化誘導することができた。 この巨細胞は前述したマウスの骨髄を用いてin vitroにおいて分化誘導される破骨細胞様の巨細胞とは形態的に異なっていた。 平成10年度はこのヒト破骨細胞様巨細胞の性質を、更に分子レベルで解析すると共に、骨吸収作用および造骨作用に対する放射線の影響を調べていく予定である。
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