研究概要 |
ベーチェット病は人種を越えてHLA-B51抗原と強く相関していることが明らかにされており、特定の遺伝的背景のもとに、何らかの外的要因が作用して発症すると考えられている。我々はHLA-B,HLA-C遺伝子領域を含む連結クローンを分離し、蛍光自動シークエンサーを用いたショットガン法にて、約1,200kbのゲノムの全塩基配列を決定した。ノザンハイブリダイゼーションにより、HLA-B遺伝子近傍に5個の新遺伝子(NOB1-5と命名)を見出し、一部cDNAクローンを分離した。また、この領域に、2〜5塩基の反復配列からなる262個のマイクロサテライトリピートを見出した。その内、MICA遺伝子のわずか12kbセントロメア側に、反復回数が約1,000回にも上るTA配列を認め、遺伝学的な組み換えのホットスポットである可能性が示唆された。MICB〜HLA-C遺伝子領域の26個について、患者群でその遺伝的多型性を検索し連鎖解析を行った結果、MICA〜HLA-B遺伝子間に位置するマイクロサテライトMIBが本病と最も強く相関していた(P=0.0000004;Maekov chain parameter,P+S.E.=0.00000±0.00000)。MICA,MICB遺伝子の多型性解析を行い、各々20種類、11種類の対立遺伝子を同定した。本病患者群でMICB遺伝子の多型性を検索したところ、有意な相関は認められなかった。また、MICB遺伝子を発現させたトランスジェニックマウスも作成した。これらの結果から、本病の原因遺伝子はMICA〜HLA-C遺伝子間の約160kbの領域に存在し、さらに、MICA〜HLA-B遺伝子間のマイクロサテライトMIBを頂点とした近傍領域に存在する可能性が非常に高いことが示唆された。既に我々はこの領域のゲノムの全塩基配列を決定しており、未知の新遺伝子(NOB遺伝子)を見出している。すなわち、本病の原因遺伝子はMICA、NOB1,NOB2,NOB3,HLA-B遺伝子のどれかである可能性が高いと考えられた。
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