我々は、血漿を使って放射線照射により発生するHならびにOHラジカル量について実験を行った。本研究は、血漿中に含まれる脂質中の中性脂肪とコレステロール濃度と蛋白質中の総蛋白質ならびにアルブミン濃度を測定し、発生するラジカル量と個々の濃度との関係似ついて検討することとした。対象は約100名のボランティアで、相互に静脈血を採血し研究試料とした。採血した血液は速やかに遠心分離機により血漿と血球とに分離した。得られた血漿は日立7150Automatic Analyzerにて脂質(中性脂肪とコレステロール)と蛋白質(総蛋白質ならびにアルブミン)濃度を測定した。測定後、各試料は速やかに、血漿100ml、PBN緩衝溶液50μl、キレート剤(DETAP ACK)35μl、そしてラジカル補足剤(DMPO)15μlを加え混合液を作成し、X線を照射した。照射条件は管電圧60kVp、管電流5mA、照射距離30cmとし、照射線量は4、8、12Gyの3条件とした。発生するフリーラジカルの測定は日本電子社ESR測定装置を用い、O、OHラジカルの発生量を標準試料のMnピークのスペクトル波高との相対信号強度で求めた。 ヒト血漿にX線を照射することによりO、OHラジカルの発生を認めた。個々の発生量は照射線量に依存した。すなわち、照射線量の増加にともない両ラジカル発生量も増加した。また、量ラジカルの発生量には個体差があることが認められた。各個人のOラジカルとOHラジカルの絶対的発生量では、Oラジカルの発生量の方が明らかに多かった。各脂質量と各蛋白質量とラジカル量との関係は、現在、各種データの処理中である。 また、HBs抗体陽性者は陰性者と比べ発生するラジカル量が明らかに低かった。これはラジカルを抑制する物質を含有していると考えられ、今後さらに検討する予定である。
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