MRSA、HIVあるいは肝炎ウイルスなどの院内感染が社会問題になっている。歯科治療時には、出血の頻度が高いことから、血液を介する感染性疾患に対しては十分な感染予防対策が必要である。また、近年、易感染患者に歯科治療を行う頻度が高くなり、歯科治療室環境の改善が必要である。本研究では酸化電位水、すなわち蒸留水および水道水に0.07%NaClを添加した後、電気分解して得られる、pH2.6、酸化還元電位(ORP) 1100mV、有効塩素濃度16ppmの水を用いて、消毒剤としての有効性について検討し、次の結論を得た。 1. MRSA、緑膿菌に酸化電位水を作用させると、作用時間1分以内に全て殺菌されることを、培養法および透過型電子顕微鏡を用いて形態的に確認した。しかし、菌液に血清を添加した場合には、酸化電位水の作用は、著しく低下した。消毒に用いる場合には劣化しないだけの十分な水量が必要である。 2.酸化電位水に金属製医療用器具を浸漬すると、腐食が生じる器具がある。材質の問題だけでなく、器具の使用により生じた傷から腐食が発生した。セラミックやチタンを用いて耐腐食性を高めた、試作歯科用タービンに細菌を付着させ、酸化電位水を用いて消毒した結果、有効な成績が得られた。 3.酸化電位水の有効塩素濃度に応じて、細菌の消毒効果に差異が認められた。MRSAを1分間で完全に殺菌するには、8ppmの有効塩素が必要である。一方、緑膿菌は有効塩素を含有していなくとも、pH2.6の酸性状態で10分で死滅した。芽胞形成枯草菌では、有効塩素濃度120ppmで、10分必要である。
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