研究概要 |
歯周炎の進行,特に歯周組織破壊に深く関与していると推察される歯周ポケット底部で棲息し,活動している細菌種を同定するため,以下の実験を行った。まず,ヒトの歯周ポケットを可及的に保存した試料を用い,3種類の歯周病関連細菌の局在性を免疫組織学的に検索したところ.Porphyromon as gingivalis,Campylobacter rectus及びActinomyces viscosusは歯周ボケット深部から検出された(J Periodont Res,1997:10;598-607)。次いで,ヒトの歯周ポケット底部,特にいわゆるプラークフリーゾーンに棲息し歯周組織破壊に関与する細菌種を同定するため,重度成人性歯周炎に罹患し抜去された30歯を,4種類の歯周病関連細菌に対する特異抗体を用いた免疫走査電顕法により検索した。プラークフリーゾーンを2次電子像にて形態学的に観察したところ,わずかながら存在する細菌の中では,スピロヘータや長・短桿菌が優位にみられ,桿菌の中にはglycocalyx様の構造物に被覆され細菌バイオフィルムを形成し,歯根面あるいは他の菌体と付着している細菌が観察された。P.gingivalisは7試料中4試料の,Treponema denticolaは9試料中5試料のプラークフリーゾーンから実際に検出され,これらの細菌と歯周炎の進行との関連が示唆された。一方,Prevotella in term ediaが検索した7試料のうち,1試料のプラークフリーゾーンからしか検出されなっかたのに対し,A.viscosusはプラークフリーゾーンにおいても約半数の試料から検出され,A.viscosusが歯周ポケット底部におけるプラークの形成にも関与していることが示唆された。しかしながら,歯周ポケット底部の2次電子像で観察されたスピロヘータや桿菌の半数以上は4種の特異抗体に陽性反応を示さず,4菌種以外に未同定の細菌が多数存在していることが明らかとなった。
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