研究概要 |
歯科高速切削におけるシミュレーション教育は歯学部における重要課題の一つであり,とりわけ,ファントームと規格人工歯を用いた基礎実習の果たす役割は重要である.特に,臨床実習へのスムーズな移行並びに臨床で不可欠なスキルの修得という点でより効率的なシステムの導入が求められる. 本研究では,術者のスキル並びに切削の適正度を数量的に表現・評価するシステムの確立を目指して,模型歯をデジタルカメラで撮影し,その画像をパーソナルコンピューターに取り込んで数値解析を行うことにより, 1.計測に伴う諸問題の検討 2.窩洞外形の計測結果から切削技法を評価する試み を行った. 1.計測に伴う諸問題検討 本計測システムには,非接触式計測法が直面する「レンズと被写体との位置関係」という問題が不可避である.しかしながら,これらの問題は理論的には適切な座標変換を行うことにより補正することが可能である.本研究では,隣在歯を含む小窩を計測基準点として選定し,これらの相対的な位置の測定結果に対して最小自乗法による「最適化」という操作を加えることにより,個々の適切な座標変換の行列とベクトルを導出することが可能であった.座標変換の精度は,回転角が十分小さい回転の場合と平行移動の場合は共に0.10mm以下であった. 2.切削技法の評価 被切削歯の形態の数値解析結果に基づいて切削技法の適正度について評価するために最も有効な臼歯1級窩洞の理想窩洞の設計を試みた結果,メラミン人工歯上で,咬合面の裂溝と裂溝並びに裂溝と辺縁隆線との交点を基準点とし,窩洞の境界を基準点間の距離の比として表現するような課題の設定が最適であった.これにより,切削技法を切削時における転向点の変位と切削方向の偏向角のみで表現することが可能である. 以上の方法にしたがって切削技法の評価を行った結果,資格のみでは識別困難な非常に小さなエラー(0.2mm)を検出することが可能である上,複合的な要因によるエラーやほかの部分で発生したエラーに伴う錯視に影響されることなく,エラーの客観的並びに数量的な評価が可能であることが判明した.
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