研究概要 |
歯科高速切削におけるシミュレーション教育は歯学部における重要課題の一つであり,限られた時間内に充分な教育効果を得るためには切削技法を客観的に評価することが可能である有用なシステムの利用が不可欠である.そこで,本研究では形成した窩洞をデジタルスチルカメラで撮影し,その画像をパーソナルコンピュータに取り込んで数値解析を行うことにより,術者のスキルと切削の適正度を数量的に表現・評価するシステムの構築を目指して,計測に伴う諸問題の検討と窩洞外形の計測結果から切削技法を評価する手法に関する検討を行っている. 今年度は,本計測システムが直面する「レンズと被写体との位置関係」という間題点に関連して,計測対照が基準平面に対する傾斜並びに異なった距離に位置する場合の補正方法に座標変換を用いた手法を拡張する試みを行った.その結果,計測対象となる歯牙に設定した計測基準点から算出した精度は,傾斜角が十分小さい場合は基準平面上でのみ座標変換を作用させた場合と近似していた.この場合,術者のpd条件から得られた座標系をこの基準平面上で定義することによって,術者側の感覚に矛盾しない座標系を定義することが可能である. 一方,この手法で模型歯上の窩洞形態を計測し,最小自乗法による最適化問題から切削技法の適正度について切削時における転向点の変位と切削方向の偏向角で表現すると,基準平面の方向角と光軸とのなす角が充分小さい場合は,基準平面内での手法が近似的に有用であることが判明した(15度以下).しかしながら,基準平面の方向角と光軸とのなす角が大きくなるにつれて切削方向の偏向角の検出精度が低下し,傾斜角の検出に関して最大8度の誤差が生じることがが判明した.これは,傾斜角が大きくなるにしたがって照明の入射方向の影響を強く受けることから,境界線の判別法に関する画像処理の手法を確立する必要があることが示唆された.これらの問題は,繰り返し学習によるスキル向上の効果判定を行うためには不可欠であることから,座標変換システムの3D化と境界値のソフト的な判別法に関して,目下検討中である.
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