研究概要 |
最近,修復材料の所用性質として抗菌性を付与する傾向にある。本研究では,レジン系仮封材に抗菌性を付与する目的で種々の抗菌剤を添加し,その効果について検討を行なった。 レジン系仮封材としてプラストシール,抗菌剤として銀ゼオライトあるいはCa(OH)_2粉末,使用菌株としてS.mutans(ATCC25175)およびL.casei(IFO3533)を用い,以下の試験を行なった。 1.Ca,Agイオン溶出試験 抗菌剤配合レジン系仮封材試料は粉液比が2:1となるように調製し,37℃で24時間乾燥しモノマー成分を揮発させた。その試料を100mlの蒸留水中に浸漬し,イオン濃度計を用いてCa,Agイオンの溶出量を1週間まで経時的に計測した。 2.Well式阻止斑形成試験 寒天平板拡散法により,各試料の抗菌性を評価した。 3.細菌付着試験 S.mutans菌駅25mlを5% Sucrose加 Berman培地 500mlに加えた。これに試料を懸垂し振盪を加えながら37℃で18時間インキュベートした。その後,試料を取り出し,蒸留水を一度くぐらせたうえ37℃で24時間乾燥し,付着したプラークの乾燥重量を求めた。 1.Ca,Agイオン溶出試験の結果,Ca(OH)_2,銀ゼオライトの配合量の増加に伴って,経時的にCa,Agイオンの溶出量が増加した。また,その溶出量は,平衡に達する8割程度の量が最初の10分までに溶出し,その後の溶出量は漸時減少していった。 2.Well式阻止斑形成試験の結果,一般にCa(OH)_2,銀ゼオライトを配合した試料の阻止斑が大きくなる傾向が認められたが,抗菌剤を配合していないコントロールにも阻止斑が形成された。試料中に含まれるモノマーも細菌の発育抑制に関与すると考えられた。 3.細菌付着試験の結果,Ca(OH)_2,銀ゼオライトの配合量の増加に伴って細菌付着量は減少した。この結果,抗菌剤配合がプラーク付着抑制に働くと考えられた。 以上の結果より,抗菌剤配合レジン系仮封材の有用性が推察された。
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