接着性レジン表面における歯髄細胞の増殖分化の機構をin Vitroの系でさらに明らかにするため、各種接着性レジンに対する培養歯髄細胞の反応性、ならびにレジンの細胞毒性について検討をおこなった。Bis-GMA系(BG)ならびに4-METE/MMA-TBB系(MMA)のレジンにて、ニホンザルの歯髄細胞を培養し、細胞接着能、細胞増殖能および、アルカリフォスファターゼ活性を測定し検討をおこなった。歯髄細胞は、全身麻酔下において抜去した健全永久歯より歯髄細胞を無菌的に採種したものである。なお、培養用シャーレ上に播種した歯髄細胞をこれらの解析の対照にすることとした。 細胞接着数は、BGよりもMMAの方がやや高い値を示す傾向が認められた。また、BGでは細胞増殖がほとんど認められなかったのに対し、MMAでは対照よりやや劣るものの細胞増殖が観察された。アルカリフォスファターゼ活性については、MMAがBGに比べて高い活性を示した。一般にレジン材料に対する培養歯髄細胞の反応性は対照よりも劣る傾向が認められ、MMAがBGに比べて、培養歯髄細胞の増殖や分化を阻害する傾向が少なかった。なお、これらの結果は播種細胞数などの培養条件に依存しているものと考えられるので、今後、さらなる検討が必要と思われる。また、本研究に用いた実験系が接着性レジンとの界面における歯髄細胞の増殖や分化の機構解明に有用であると思われた。
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