歯周炎発症の初期段階に破壊されるといわれる接合上皮に着目した。本実験の目的は、その上皮細胞間融合(ギャップ結合)が歯周病原性細胞由来LPSの侵入により影響される組織学的変化について明らかにすることである。 実験動物に6週令ルイス系雄性ラットを使用した。またLPSにはsigma社製のE.coli由来LPSと歯周病原性細胞由来LPSとしA.actinomycetemcomitans由来LPSを使用した。ラット左側下顎臼歯部舌側の歯肉溝より防湿下にてLPSを30分間滴下した。これを連日繰り返し1、3、7日後、エーテル麻酔下にて屠殺後下顎骨を採取し、ザンボニ固定液およびPLP固定液によって4°Cで6時間固定した。つぎにEDTAにて脱灰後PBSで洗浄し上昇エタノール系列にて脱水し、ザンボニ固定を行った試料は、キシレン処理後、パラフィン包埋を行った。これより連続切片を作製し、ラットのgap-junctional proteinに対する特異的抗体(ZYMED社製)によるFITCを用いた蛍光抗体法とH.E.染色をあわせて行い光顕的な病理組織観察を行った。その結果、蛍光抗体法では接合上皮細胞間のgap-junctional proteinを抗原として検出することはできなかった。しかしH.E.染色による病理組織学的観察ではLPS滴下の1日後で接合上皮直下結合組織に好中球の浸潤が観察され、7日経過後ではさらに接合上皮細胞間隙の拡大や変性がみられた。これらの所見は滴下したLPSが歯肉溝より侵入し、接合上皮細胞を破壊しながら、深部結合組織に浸潤していくことを示唆するもので、歯周炎発症過程のメカニズムを解明する上で重要な所見であると考えている。そこで平成10年度は9年度同様の方法で滴下したLPSが、組織内のどの範囲まで浸潤しているかを知るため蛍光抗体法によりその局在を明らかにする予定である。
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