研究概要 |
歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalisが産生するプロテアーゼが病原因子として重要視されている。我々はこれまでに,培養系を用いた実験系で,P.gingivalis由来プロテアーゼが,ヒト歯肉線維芽細胞を細胞死へ導くことを明らかにした。本研究では,P.gingivalis由来プロテアーゼによる細胞死の発現機構について検討した。 ヒト歯肉線維芽細胞は,健常歯肉よりout growth法により得た。P.gingivalis由来プロテアーゼはP.gingivalis 381株の培養上清より分離し,44kDaの精製プロテアーゼを得た。Conf1uentに達した細胞をP.gingivalis由来プロテアーゼで刺激後,位相差顕微鏡により細胞動体を観察した。細胞死の判定はトリパンブルーによる染色法とMTTアッセイによる細胞致死活性を測定した。細胞死の発現機構は,Ce11 Death Detection ELISAキットを用い,アポトーシスの特徴であるDNAの断片化の有無を確認し,アポトーシス細胞の検出を行った。 その結果,プロテアーゼ刺激により,細胞は剥離し丸状を呈し,トリパンブルー染色とMTTアッセイにより致死活性が発現することが確認された。さらにELISA法によるDNA断片化率の上昇,組織化学的検索でアポトーシス細胞が認められたことから,P.gingivalis由来プロテアーゼはヒト歯肉線維芽細胞に対してアポトーシスを引き起こす可能性が考えられた。
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