【研究目的】 30%シュウ酸カリウムと3%シュウ酸水素カリウムを用いた湿布法と30%シュウ酸カリウムのイオン導入法により象牙細管内に生成する結晶の象牙質表層部から歯髄側への距離、生成する結晶に関する検討を行った。 【材料と方法】 歯髄を抜去したウシ下顎前歯T1を1ケ月以内に被験歯として用いた.被験象牙質面に内径6mm孔のマスキングテープを貼り面積を規定した.その後50%クエン酸水溶液4mlを15秒間作用させた後、下記の2条件の実験群に分けた. 1.30%シュウ酸カリウムと3%シュウ酸水素カリウムを用いた湿布法 被験象牙表面に30%シュウ酸カリウム20mlを含んだ小綿球を2分間、静置後、脱イオン水にて軽く水洗し、小綿球にて乾燥し、3%シュウ酸水素カリウム20mlを含んだ小綿球を2分間静置した. 2.30%シュウ酸カリウムのイオン導入法 被験象牙質面に30%シュウ酸カリウム20mlを含んだ小綿球を置き、電流30μA、8分間陰極性通電を行った. 〇象牙細管内に生成した結晶の象牙質表層部から歯髄側への距離の測定 内径6mm孔のマスキングテープを貼った被験象牙質面を含むように硬組織切断機にて切り出し、割断した.通法に従い被験象牙質割断面に白金蒸着を施し、SEM観察を行い、生成された結晶の被験象牙質表層からの距離を測定した. 【結果】 1.30%シュウ酸カリウムと3%シュウ酸水素カリウムを用いた湿布法 象牙質処理面から歯髄側への象牙細管内での結晶生成距離は平均46.200μmであった. 2.30%シュウ酸カリウムのイオン導入法 象牙質処理面から歯髄側への象牙細管内での結晶生成距離は平均83.490μmであった. またイオン導入法では湿布法に比べ象牙細管内により多くの結晶が観察された.イオン導入法により湿布法よりもシュウ酸イオンが象牙細管歯髄側へ移動し、結晶を生成するためと考えられた.
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