本研究では骨粗鬆症での歯髄組織における象牙質形成能に関して以下のような研究を行った。(1) エストロゲン欠乏ラットにおける象牙芽細胞における複合糖質合成の解析.(2)培養歯髄細胞における象牙質形成過程の解析ならびにPTHrPの影響について。各々の項目に関する研究結果を以下に述べる。 1) エストロゲン欠乏ラットにおける象牙芽細胞における複合糖質合成の解析 (材料と方法):10週齢の雌SDラットに対して卵巣を摘出したOVXグループと偽手術を行ったShamグループに分け、手術後5週目に下顎骨を摘出し、脱灰したのちパラフィンに包埋して切片を作製した。これらの切片を用いて、ガラクトースに特異的に結合するPNAレクチンを用いて組織化学的染色を行った。(結果):卵巣を摘出したラット(OVX)の切歯の象牙芽細胞がPNAレクチンに強く染色されたのに対して、コントロール(Sham)のラットの切歯の象牙芽細胞はPNAレクチンにほとんど染色されなかった。(考察):以上の結果はエストロゲン欠乏によって象牙芽細胞のプロテオグリカンの糖鎖合成が変化したことを示唆しており、閉経後骨粗鬆症と象牙質形成能には密接な関係があることが示された。 2) 培養歯髄細胞における象牙質形成能の解析ならびにPTHrPの影響について (材料と方法):5週齢のSDラットの下顎切歯を抜歯し、歯髄から酵素処理にて細胞を分離し、一定期間培養した。培養細胞にPTHrPを添加し、一定期間培養後、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性、オステオカルシン量、カルシウム量、DMP-1の発現量を検討した。(結果):コントロール群の細胞は培養開始から経時的にALP活性、オステオカルシン量、カルシウム量、DMP-1量が増加し、培養20日では象牙質様の結節が形成された。また、PTHrPによって細胞の増殖は促進された。(考察):本研究の結果から、この培養系は歯髄細胞から象牙が細胞への分化過程を反映していることが強く示唆された。また、PTHrPは歯髄細胞の増殖を強く促進することが分かり、将来の覆髄剤への応用の手がかりになる結果であると考えられた。
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