研究概要 |
歯髄は硬組織に取り囲まれているという特殊性から、その病態を的確に判断することは難しい。特に、外傷歯や歯根未完成歯などでは従来からある電気的歯髄診断法では、反応しないことが多く、誤診する危険性が非常に高い。また、この方法は、歯髄の痛み知覚闘値を参考にするため診査時の患者の不快感は避けられないのが現状である。ところが、近年レーザードップラー血流計(以下、LDF)の開発が進み、人の歯髄の血流計測が可能となってきた。これは、生体に対し、非侵襲的であるため 将来、電気的歯髄診断器にとって変わる可能性が高い。我々は、かねてから歯髄の微小循環網の実験モデルとして、ラビットイヤーチェンバー法(以下、REC)を応用してきた。この方法は、兎の耳介に装着した透明窓内部の微小循環動態を生体顕微鏡的に観察することができる。また、LDFにより血流量の変化を記録することも可能である。そこで、今回、REC内の組織に各種の刺激を加え、その際の血流変化をLDFにより計測した。また、本実験の主旨に賛同の得られた被検者の歯を用いて、臨床的に同様の計測を行った。 まず、微小循環系の反応が正確にLDFにより計測されていること、またRECと歯との比較検討をするために2%キシロカイン(1/80,000エピネフリン含有)の浸潤麻酔による影響を観察した。その結果、両者で著明な血流の減少を示した。次に、各種の刺激としてレーザーを用いた。使用したレーザー装置は、Nd:YAGレーザー(American Dental Laser DLase-300)とHe-Neガスレーザー(タカラbelbeam)をもちいた。低出力でのレーザー照射では両者において顕著な血流の変動は見られなかった。なお、現在、他の条件により実験を継続中である。
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