1.齲蝕のない健全な第3大臼歯で抜歯予定の患者から同意を得て、抜歯後すぐにペニシリンとストレプトマイシンを含むMEMで洗浄、保存し、クリーンベンチ内でセメント-エナメル境にて歯髄組織を傷つけないようにして歯科用バ-を用いて切断し、歯髄組織を摘出し、培養を開始した。歯髄線維芽細胞は増殖遊離能が強いことから細かく切断した組織片を培養することにより遊出してきた細胞を分離培養し、形態学的に線維芽細胞と同定した。線維芽細胞は主にMEM培養液に10%FBSを加えてを培養した。歯髄血管内皮細胞は、機械的細胞分離培養法にて分離してきた細胞をカルチャーディシュに対する付着能(速度)の違いにより血管内皮細胞を分離した。CD36に対する抗体と形態学的方法を用い血管内皮細胞を同定した。この細胞は血管内皮細胞専用の培養液に20%FBSを加えて培養した。 2.ゲルの操作性という観点からすると濃度が高い方(1.5mg/ml以上)がよかったが、コラーゲン濃度の上昇は線維芽細胞の増殖を妨げたので、ゲルを使用した3次元細胞培養となると、結局コラーゲンゲル濃度は1.0-1.2mg/ml(0.1-0.12%)が最適と考えられた。一方、血管内皮細胞はコラーゲンゲル濃度が1.0-2.0mg/mlのレベルでは増殖能にほとんど影響がなかったので、単独の細胞培養では濃度が高い方(2.0mg/ml)が遊離と考えられたが、線維芽細胞との共培養となると1.0mg/mlの方がよいと考えられた。 3.線維芽細胞用に用いたMEMを共培養に用いると内皮細胞は増殖せずに減少した。一方、内皮細胞用の培養液を用いると、最初は線維芽細胞の増殖は抑制されたが、2-3日で異なる環境に適応できてきて、ゆっくりと増殖を始め、しだいに内皮細胞の増殖を抑制し始めた。共培養用の培養液の選択は難しく、現在検討中である。
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