研究概要 |
歯周組織を再生させるためには、歯根膜が他の組織との共通性をもたない全く特異的な組織であるのかどうかを明確にする必要がある。そのためには歯根膜組織と他の組織との比較検討を行なわなければならない。そこで我々は、比較する組織として外骨膜に着目した。外骨膜は骨表層に存在する線維性結合組織であり、骨に近接し、その組織内に骨芽細胞が認められるものの通常骨化しない組織であり、歯根膜と近似している。さらに歯周組織において、歯槽骨の外骨膜と歯根膜は連続性を有している。そこで、本研究では、外骨膜がいわゆる場の違いにより歯根膜様の構造をとり得るのか?なぜ外骨膜や歯根膜に骨化が見られないのか?を目的に実験を行った。 成犬の抜去歯からOut growthさせた歯根膜細胞と、生後3か月の犬の頭蓋の外骨膜からOut growthさせた外骨膜細胞それぞれのALPase活性、PTH応答性、Type Iコラーゲン産生量および1,25(OH)_2D_3依存的BGP産生量を検索した。しかし両細胞とも骨芽細胞様細胞の特徴を示し、両細胞間で違いは認められなかった。 生後3か月の犬の頭蓋の外骨膜を、歯根膜とセメント質を除去した抜去歯根にラッピングして、成犬の下顎骨に形成した骨窩洞に埋入した。外骨膜をラッピングせずにそのまま抜去歯根を骨窩洞に埋入したものを対照群とした。埋入6週後、対照群では抜去歯根表層の大部分に著名なアンキロ-シスが生じ、歯根膜腔は認められなかった。一方外骨膜をラッピングした群では、歯根表層にアンキロ-シスは認められず、歯根膜腔が存在していた。しかし歯根表層にセメント質は認められず、歯根膜腔の線維も歯根表面に平行に配列していた。現在実験期間を延長した同様の実験系を行っている。 また外骨膜から獲得した外骨膜細胞および抜去歯から獲得した歯根膜細胞それぞれを象牙片上で培養し、それぞれの象牙質片を成犬の下顎骨に形成した骨窩洞に埋入した。6週後、歯根膜細胞群の一部の象牙質片表層にセメント質の形成が認められているものの、外骨膜群では認められなかった。しかし未だ数例が少なく、現在例数を増やしてさらなる検索を行っている。
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