酸化亜鉛ユ-ジノール練和物(ZOE)から遊離したユ-ジノールが、水酸化カルシウムペースト層を透過し、さらに象牙質を経て歯髄組織に達しうるか否かについて検討する目的で、ZOEから水酸化カルシウムペーストへのユ-ジノールの遊離を調べた。^3Hで標識したユ-ジノールを用い、酸化亜鉛^3Hユ-ジノール練和物を粉液比4.0で調製した。練和物を内径6.0mm、長さ20mmのシリコンチューブに10mm填入した。その後、水酸化カルシウムにグリセロールあるいは精製水を粉液比1.25で混和したペーストをチューブの反対側より10mm填入した(1群2本)。両端より各練和物を填入後、経時的にチューブを2mm間隔で横切断した各硬化練和物中の^3H放射能量は、可溶化剤で処理した後、液体シンチレーションカウンターで測定し、評価を行った。 水酸化カルシウム+グルセロール群では、填入後1時間ですでにZOEとの境界から2mmまでの水酸化カルシウム層に34cpmの放射能が認められ、水酸化カルシウム+精製水群では702cpmの放射能が認められた。さらに、グルセロール群では填入後3時間で水酸化カルシウム2-4mmへのユ-ジノールの移行が認められ(1326cpm)、その後48時間まで経時的に放射能の移行が認められたが、4-6mmへの移行は全く認められなかった。精製水群では2-4mmの水酸化カルシウム層でグリセロール群よりも約2倍の放射能が測定され、さらに6時間では6-8mmにまでユ-ジノールの移行が認められた。以上の結果からユ-ジノールはグリセロール、精製水のいずれで調製した水酸化カルシウムペーストであっても、4mm層厚までは透過することがわかった。今後はこの方法、条件を参考に詳細な物理・生物モデル実験を行う予定である。
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