研究概要 |
セメント質由来細胞接着因子(CAP)はセメント質に存在するコラーゲン様細胞接着因子でとして報告してきた。平成9年度の実験結果よりCAPは歯肉線維芽細胞とα5β1 integrinと介して接着し、分子量125〜130kDa,80kDa,75kDaおよび44kDaの細胞質内蛋白質のチロシンリン酸化を誘導することを示した。平成10年度の実験結果より、125〜130kDaの蛋白質はfocal adhcsion kinase(FAK)およびp130^<Cas>で主にfocal adhesion kinaseがチロシンリン酸化されており、44kDaはp44 ERK-2mitogen activated protein kinase(MAPK)がそれぞれチロ ・シンリン酸化されていることを同定した。またCAPに接着した細胞はc-fos mRNAの発現が誘導された。これらことからCAPはintegrinを介してFAK-MAPKを経由して核内へ情報を伝達していることが考えられる。CAPに接着しない細胞、または単層の細胞へCAPを加えても顕著な情報伝達物質の活性化は見られないため、CAPは細胞接着を介してのみ情報伝達経路を活性化するとことが確認された。CAPによって誘導されるMAPKのkineticsおよびc-fos mRNAの発現量は、同じα5β1 integrinと結合するfibronectinと比較して異なるため、特有の経路を活性化している可能性が示唆できる。CAPに接着、伸展した細胞内ではb1 integrinおよびvinculinの集積によるfocal contactが存在し、actin stress fiberの重合が観察された。以上の結果より、CAPが誘導する細胞内情報伝達経路はintegrinを介して細胞増殖、分化および細胞骨格形成を制御していることが確認された。またCAPは歯周組織再生時に細胞を選択し、その後細胞増殖および分化を誘導する因子と考えられる。
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