研究概要 |
申請者は、歯周炎患者の歯周溝滲出液(GCF)中のインターロイキン1(IL-1α,IL-1β)およびインターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL-1ra)の動態について調べ、歯周炎の重症度に密接に関連している事を明かにしてきた。そこで、IL-1およびIL-1ra量が臨床的な病態の違いも反映するか否かについて、急速進行性歯周炎患者の歯肉溝滲出液中のIL-1およびIL-1raを測定し成人性歯周炎患者と比較することで検討した。 被験者は1997年に愛知学院大学付属病院に来科した患者で、成人性歯周炎患者(AP)および急速進行性歯周炎患者(RPP)と診断された者で、特記すべき全身疾患のない者を用いた。臨床症状としては、通常の臨床所見に加えてScheiらの方法によりレントゲン写真にて歯槽骨吸収率を測定した。GCFは、ペリオペ-パ-を用いて採出し、サンドウイッチELISA法で測定した。 臨床症状、歯槽骨吸収率の所見においてAPとRPPの間に統計学的な有意差は認められなかった。しかし、APのGCF中のIL-1α量は約201.4pg/toothであったのに対し、RPPは約311.2pg/toothでありRPPの方がより高い傾向を示した。また、APのGCF中のIL-1β量は、約150.1pg/toothであったのに対し、RPPは約123.4pg/toothでありRPPの方が低い傾向を示した。一方、APのGCF中のIL-1ra量は、約32.9ng/toothであったのに対し、RPPは13.2ng/toothとなり、RPPの方がAPより低く統計学的に有意差が認められた。IL-1活性度は、APが平均15.9であったのに対し、RPPは平均46.4であり統計学的に有意差が認められた。これらの結果より、GCF中のIL-1を測定することは病態の違いを判別する上で意義深いことが示唆された。
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