研究概要 |
【目的】 残根状態で抜去された根管充填歯の根管象牙質がどのような硬さを示すかについて,健全歯および未根充歯の根管象牙質の硬さと比較することによって検討した. 【材料および方法】 残根状態で抜去された歯および健全抜去歯(対照)の根管象牙質の硬さを,歯髄腔側からセメント象牙境まで象牙細管の走行に沿って測定した. 【結果および考察】 1.健全歯の根管象牙質の硬さは,根尖部では全体としてフラットであった.その他の部位の硬さは,歯髄腔側から徐々に上昇し,中央よりセメント質寄りの部で最高値となり,セメント象牙境にむかって急激に低下した. 2.未根充歯の根管象牙質の硬さは,健全歯と比べて,また根充歯と比べても,全体として硬さが低下しており,歯髄腔側での低下の方が,セメント象牙境寄りの部での低下より大きかった. 3.根充歯の根管象牙質の硬さは,健全歯と比べると,全体としてやや硬さが低下傾向にあるものの,髄腔壁部では,やや硬くなっている傾向が観察された. 未根充歯の根管象牙質の硬さは,健全歯に比べて低かったのは,未根充歯は根管内に貯留した細菌などの作用により脱灰・軟化したためと思われる.しかし,その軟化のパターンは咬合面う蝕の軟化のパターンと異なっていた. 根充歯の根管象牙質の硬さが,未根充歯の硬さに比べて髄腔壁部でやや高い値を示しており,セメントなどの根充用シーラーが何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆されたので,今後は,未根充歯における再硬化の可能性について検討していく予定である.
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