研究概要 |
咀嚼時における咬頭嵌合位付近での咬合接触と関節内圧力および閉口筋活動との関連性を検討する目的で、非咬みしめ側咬合接触状態の左右差と下顎の変位および閉口筋活動との関係を調べた。 被験者は26歳から33歳の個性正常咬合を有する、顎機能に異常が認められない成人男子7名とした。咀嚼閉口時における咬頭嵌合位付近での咬含接触状態をシミュレートするために被験者に片側でストリップスフィルムを咬みしめさせた。このときの非咬みしめ側の咬合接触状態をブラックシリコーンにて記録し、画像解析装置にて接触面積を測定した。つぎに、咬みしめ時の前頭面上での下顎の変位を評価するために、セントラルベアリング装置上で咬みしめを行わせたときの支持点と左右下顎第二大臼歯部の変位量を差動変圧器式変位計側装置を用いて測定した。同時に咬筋および側頭筋前部の筋活動の測定を行った。その結果、片側でのフィルム咬みしめ時の非咬みしめ側における総接触面積の左右差と、セントラルベアリング装置上で咬みしめた場合の左右下顎第二大臼歯部における上方変位量の左右差は、有意な正の相関関係を有していた(r=0.85,p=0.01)。片側咬みしめ時の非咬みしめ側における総接触面積の左右差と、セントラルベアリング装置上で咬みしめた場合の咬筋および側頭筋前部の活動量の左右差には、有意な相関関係が認められなかった。 以上の結果から、両側の歯の接触面積と大臼歯の変位を比べると、非咀嚼側接触面積が大きい側で下顎の上方変位量が大きいと考えられる。さらに、下顎の上方変位量が大きい側では関節内圧力が高いと推察されることから、非咀嚼側接触面積が大きい側で関節内圧力が高くなる可能性が大きい。
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