研究概要 |
無歯顎者では義歯を長期にわたり装着することにより,下顎頭に過大な負荷がかかり,下顎頭の変形が引き起こされる.これは応力と歪みが局所に集中することにより生じると推測されている.本研究では,加齢により起こる骨粗鬆症などの骨疾患により下顎頭の形態と骨密度に変化が起こった場合に,下顎頭の力学的挙動に生じる変化を3次元有限要素モデルで解析した. 下顎頭解析モデルにシミュレートするために,Yaleの報告を参考にRound,Flatの2種類,皮質骨の厚さが下顎頭上部で1,0.5mmとなるような,計4種類のモデルを準備した。さらに関節円板をモデルに組み込み、円板上面を拘束し,荷重を前内上方に200N負荷した。応力と歪みの計測点は、下顎頭中央部、そして中央部から前後左右に2mm離れた4点、および下顎枝前縁部の計6点とした。各モデルでそれぞれの計測点における応力、歪みの変化を算出し、形態と骨密度の影響を考察した。 Roundタイプの皮質骨では、応力は下顎頚前縁に集中していたが、皮質骨の厚みによる影響はみられなかった。また、Flatタイプの場合も同様の結果が得られた。歪みについてはRoundタイプ、Flatタイプともに下顎頭前部の海綿骨に歪みの集中がみられたが、これについても皮質骨の厚みの影響はみられなかった。下顎頭が中心位にあるとき、応力は下顎頸前縁、歪みは下顎頭前部の海綿骨に集中していることになるが、もし、応力の集中する部位の骨吸収を受けるという前提が正しければ今回の結果は下顎頭の表面は変形しにくいことになり矛盾が生じる。つまり、下顎頭の変形は偏心位において負荷される荷重による影響を受けていることが想像され、関節円板の損傷による影響も含めて、原因究明が今後の課題であると考えられた。
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