全部床義歯は維持および支持を被圧変位性と可動性に富む口腔粘膜に依存しているため、機能時における義歯床の動揺・変位は避けることができない。しかし、義歯の動揺を最小に抑え維持・安定の向上を図ることは咀嚼・発音のなどの機能の回復、顎堤の保護の観点からも重要なことである。従って、機能時の義歯の動揺を定量的に把握し、それを直ちに臨床操作に反映できるような手法を開発することは意義のあることと考える。 その目的を実現するために、超小型加速度センサを用いた義歯動揺量測定装置の開発を行っている。本年度の実験計画は、平成9年に引き続き早期接触部位を判定するアルゴリズムの作製である。また同時に臨床の場で使用できるように計測装置の小型化を行うことである。 模型実験の結果より、早期接触部位と各加速度センサの出力の偏相関は認められるものの、早期接触部位の詳細な同定(どの人工歯に早期接触があるか)については、解析することはできなかった。しかし、咬合が調和しているかどうか左右側のどちら側の咬合が強いかは解析することが出来た。 装置の小型化に関しては、模型実験で使用していたA/D変換機やcomputerをそれぞれPC Cardやノート型computerに置きかえることにより、臨床の場においても使用することができるようになった。 今後、この慣性測量装置をプレスケールや光学式モーションキャプチャーなどと同時に使用して、咬合の調和を表す指標を作成して行きたいと考える。
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