研究概要 |
(目的) 高齢者における顎関節症状の発現頻度を明らかにし,さらに咬合支持のとの関係について分析することを目的として調査をおこなった. (方法) 調査対象は,埼玉県深谷市の老人病院入院患者のうち,顎関節と咬合に関する診査に対して同意,協力の得られた65歳以上の高齢者182名(男性63名,女性119名,平均年齢80.0歳)とした. 咬合に関する調査項目は,咬合支持の有無とした.咬合支持の有無により対象を2群に分類し,咬合支持が存在している群を咬合支持群,咬合支持が欠如している群を支持欠如群と呼ぶ.顎関節症状に関する調査項目は,顎関節部の圧痛および顎関節雑音の有無とした. (結果) 1)全調査対象の約4分の1に顎関節症状が認められたが,そのほとんどが顎関節雑音のみであり,疼痛を伴う重篤な症状の者は僅かであることが明らかになった. 2)顎関節症状の発現は,男性で14.3%であるのに対して,女性では30.3%と高頻度に認められた.両群間の発現頻度には,カイ2乗検定により5%レベルで有意差が認められた. 3)咬合支持の有無と顎関節症状の発現頻度との関係をみると,男女ともに支持欠如群では高い症状発現頻度を示すことが明らかになつた.特に,男性においては咬合支持群と支持欠如群の顎関節症状発現頻度に有意差がみとめられた.
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