研究概要 |
目的 高齢者における顎関節症状の発現の実態を明らかにし,さらにその発現頻度と咬合状態との関係を明らかにすることを目的として,老人病院入院患者を対象とし顎関節と咬合に関する調査を実施した. 方法 今回は,高齢者における顎関節雑音の頻度と義歯の使用の有無との関係を分析するために,65歳から85歳までの年齢範囲の被験者であり,かつ残存歯により咬頭嵌合位が明確に定まらない者119名を対象とした. 咬合に関する調査項目は義歯の使用の有無とし,義歯の有無により対象を2群に分類した.義歯を使用している群を義歯使用群,義歯を使用していない群を義歯不使用群とした.各群の人数は,男性・義歯使用群25名,男性・義歯不使用群19名,女性・義歯使用群43名,女性・義歯不使用群32名である. 顎関節関する調査項目は顎関節雑音の有無とし,触診および聴診により診査した. 結果 顎関節雑音の発現頻度は,男性・義歯使用群では4.0%,男性・義歯不使用群では26.3%,女性・義歯使用群では11.6%,女性・義歯不使用群では34.4%であり,男女ともに義歯を使用していない群の方が,義歯を使用している群よりも顎関節雑音が高頻度に認められた.咬合が崩壊し,咬頭嵌合位が不明確になった高齢者において,義歯による咬合の回復を行わない場合,顎関節の退行性の変化がより高頻度に発現してしまうことが示唆され,義歯による咬合回復の重要性が再確認された.
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