研究概要 |
咀嚼運動に代表される機能運動が円滑に行われ,またブラキシズムなどのパラファンクション時に咬合性の障害を生じさせないためには,咬頭嵌合位のみならず側方およびその中間運動を含む滑走運動に調和した咬合接触を与える必要がある.そのため,歯冠修復物を装着する際には口腔内での綿密な咬合調整が不可欠である.本研究では,側方滑走運動における咬合調整時の三次元的な咬合面形態の変化が咬合紙の咬合接触像にどのように影響するかを明らかにするとともに,咬合接触像による咬合接触強さの定量的判断基準を確立することを目的とした. 研究者は平成8年度奨励研究(A)において,咬頭嵌合位における咬合調整時の三次元的な咬合面形態の変化が咬合紙の咬合接触像にどのように影響するかを明らかにするとともに,咬合接触像による咬合接触強さの定量的基準を確立した.今回,咬頭嵌合位におけるこれらの研究方法,解析結果をもとに,側方滑走運動の咬合接触像について具体的かつ詳細に検討を行った.咬頭嵌合位の明確な被験者に対し,右側第一大臼歯の支台歯形成を行い,通法に従って白金加金の全部鋳造冠を製作した.全部鋳造冠はIPでの咬合調整を行った後,全歯列型咬合紙を用いIPから側方運動させて,冠に印記された部位と咬合紙上の色の抜けた部位とを対比することで,選択的に咬合調整を行った.側方滑走運動時の咬合調整量と冠の咬合面形態の変化を,咬合調整毎に三次元座標測定器を用いて1μm単位の精度で測定し,このデータに基づいて現在解析中である. 次年度は,咬合紙の咬合接触像について定量的な画像解析方法を確立するとともに,被験歯数を増やして,各データの総合的な解析を行い,側方咬合調整時における咬合紙の咬合接触像を定量的に判断する基準を明確にするとともに,科学的かつ能率的は側方運動時の咬合調整方法の確立を試みる予定である.
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