研究概要 |
ブラキシズム測定時に咬合接触状態をモニタするための咬合力センサとして,ピエゾエレクトリックフィルムを上顎歯列装着型の常温重合アクリルレジン製スプリントに埋め込んだ咬合力センサならびにシグナルディテクタを製作した.ついで,5名の正常有歯顎者を被験者として意識下にて各種ブラキシズム様運動を行わせ,右側咬筋筋電図ならびに新たに開発したスプリント内蔵型センサによる同時測定を行った. この結果,咬筋筋電図では,クレンチングのように咬筋筋活動が優位な動作において最も観測感度が高く,グラインディングのように咬筋の活動が側頭筋などに対してそれほど優位ではない運動では測定感度が低下することが認められた.実験時の咬合力は最大咬合力の50%程度とするよう被験者に指示していたが,%MVC値にて判定閾地を変化させた場合,咬筋筋電図によるグラインディング測定感度は10%〜30%MVCという低い範囲で急速に低下することが明かとなった.これに対しピエゾフィルムを用いたスプリント内蔵型センサでは,グラインディングやタッピングなど,スプリントに加わる力が短時間に変化するような動作に対しては鋭敏に反応するが,クレンチングのように一定の荷重が持続して加わる動作では測定感度が低下することが明かとなった. ピエゾフィルム応用のスプリント型センサの特性はピエゾ素子の特性から予測し得る結果であったが,咬筋筋電図応用によるブラキシズム測定において,グラインディングの測定感度がクレンチング測定感度と比較し著しく小さかったということを過去に報告している例はほとんどない.以上のことから,本年度の研究結果は咬筋筋電図によるブラキシズム測定の信頼性が,従来考えられていたほどには高くないことを示唆するものと考えられる.
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