研究概要 |
磁気位相空間を応用した超微小変位測定器を開発し,咬合圧負担時における歯の歪を口腔内において実測した.開発した微小変位センサは交流波の位相変化によって位置変化を測定するものであり,標点間距離1μmの変化に対し0.29°の位相変化を検出し,その測定分解能は5.4nmであった.この変位センサを用いて成人男性1名の上顎左側第一小臼歯を被験歯とし咬合力の作用部位を種々に変化させた状態での歯の歪を測定した.被験歯は充填や補綴処置などの加療を受けていない健全歯である.変位センサは頬側面に装着し,被験歯に対応する下顎歯列部にオクル-ザルテーブルを設け,このオクル-ザルテーブルと被験歯の間にロードセルを介在させることにより,咬合力負担部位を頬側咬頭,舌側咬頭,咬合面中央部の3カ所に変化させるように工夫した.また加えた咬合力はそれぞれの負担部位において30kgfとした.頬側咬頭荷重時にはこの咬合力に対して,歯軸に対して平行な垂直方向に5.5mm間隔で設定した標点間において約0.7μmの短縮が観察された.また舌側咬頭荷重時には反対に標点間距離は約0.5μm伸張する結果となった.一方,咬合面中央部荷重時における変位方向には一定の傾向が認められなかった.この結果,咬合力作用時における歯の歪は咬合接触部位により大きく影響を受けることが明らかとなった. 明年度は口腔外において新鮮抜去歯を用いた実験系を開発し,歯に加える荷重の量と方向を規定し,種々の歯寇修復が歯の歪に与える影響について研究する予定である.
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