研究概要 |
本研究は従来のレジンセメントの特性をそこなわず,長期間にわたりフッ素が徐放する抗齲触性レジンセメントを新規に開発することを目的として行われ,以下のような興味ある知見がえられた。 1.粉の主成分は,シランカップリング剤で表面処理を施したシリカ,フルオロアルミノシリケートガラスと3元系の重合開始剤,液は二官能メタクリル酸モノマーとヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA),ポリアクリル酸水溶液とし,さまざまな粉液配合比のレジンを作製し,臨床的に最も操作性が優れた配合割合を決定した。 2.上記レジンセメントの重合反応をFTIRで分析した結果,予想どおりレジンモノマーの重合反応だけでなく,ガラスとポリアクリル酸との酸塩基反応が同時に起こっていることが確認できた。 3.新規レジンセメントの圧縮強さと関節引張り強さを,従来のレジンセメントと比較した結果,6ヶ月間水中に浸漬後も従来のレジンセメントとほぼ同じ値を示した。 4.フルオロアルミノシリケートガラスを各種重量比で配合したレジンセメントを,蒸留水に6ヶ月間浸漬し,フッ素イオンの溶出を測定したところ,9.5%添加したものが微量ではあるが,最も持続的に溶出することが明らかになった。今後,1年,2年と長期にわたり水中浸漬した場合のフッ素イオンの溶出性も評価する予定である。 5.フッ素徐放性レジンセメントの金銀パラジウム合金やコバルトクロム合金との接着強さを,熱サイクル負荷前後で測定した結果,従来のレジンセメントの接着性能および接着耐久性と遜色ないことが明らかになった。
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