研究概要 |
本研究では平成9年度に引き続く実験として,表面処理剤の組成を変えることによって象牙質に対するレジンの接着性を改善することを目的に,牛象牙質とレジンの接着を,引張り試験,破断後の表面の観察,接着界面の顕微鏡観察によって評価した.塩化アルミニウム,塩化セリウム,塩化コバルト,塩化第二銅,塩化第一鉄,塩化第二鉄,過塩素酸鉄,塩化ニッケル,塩化マグネシウム,塩化スズ,その他の銅塩,鉄塩といった成分を含む水溶性のプライマーを試作した.象牙質表面に試作したプライマーを塗布し,メタクリル酸メチルをトリブチルボラン重合開始剤で重合させるレジンでステンレス棒と接着した.一日水中浸漬後の引張り接着強度を万能試験機を用いて求めた結果,接着強度は,銅や鉄を含有したプライマーを使用した場合に接着強度が高くなった.また,過塩素酸鉄を含有するプライマーやセルフエッチングプライマーは接着強度を向上させること,2-イソシアネートエチルメタクリレートを含む接着剤を使用すると,プライマー中の過塩素酸鉄の至適濃度が低くなることが明らかになった.接着強度が比較的高い場合は,レジンと象牙質の接着界面に樹脂が含浸した層が走査型電子顕微鏡により観察された.また,この他にも,クレゾールがトリプチルボラン重合型のレジンと象牙質の接着を阻害すること,ホルマリンにはクレゾールの接着阻害作用を緩和する作用のあること等が明らかになった.
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