歯科用金属アレルギーで、一般の健常者で感作している割合が高く、パッチテストで擬陽性反応を起こしやすいため判定がしにくい水銀について、今年度は、アレルギー反応を判定するための至適水銀濃度の決定と感作マウスの作製を行った。抗原は、アセトン+オリーブ油を基剤とした塩化第2水銀を0.5、1、1.5、2%の濃度で用いた。感作の判定方法としては、まず、実験群のマウスの腹部に抗原を塗布し、1週間感作の誘導を試み、次にマウスの耳翼に抗原を塗布し、経時的にその厚さを計測し、未処置のマウスをコントロールとして比較し、耳翼の厚さに有意差がでたものを感作マウスとすることとした。 至適水銀濃度は、実験群のマウスの耳翼の厚さの変化が、0.5%と1%では平均50μm以下、1.5%では平均200μm、2%では150μmと、1.5%塩化第2水銀の濃度で最大の反応が観察されたため、抗原として用いる塩化第2水銀の至適水銀濃度は、1.5%であることが解った。 感作マウスの作製においては、実験群のマウスにコントロールより有意に耳翼の膨張が観察されたものと、有意差が出なかったものが観察され、コントロールにおいても2回以上の抗原塗布で実験群と同様の耳翼の腫脹が観察されたものもあった。 以上のことより、コントロールで初回に観察された耳翼の腫脹は水銀の毒性反応で、感作判定のための抗原塗布を繰り返すことにより、水銀に感作し得る可能性が示唆され、実験群で観察された耳翼の腫脹は、水銀の毒性反応と水銀感作によるアレルギー反応が同時に現れたのではないかと考えられる。 今後は、実験計画に沿ってさらに研究を進めていきたいと考えている。
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